夏期観測2016プロジェクト

ダウンロード
夏期集中観測2016プロジェクト一覧(ダウンロード)
project2016.pdf
PDFファイル 1.4 MB

研究プロジェクト


R01 富士山頂における長期二酸化炭素濃度観測
向井人史(国立環境研究所)

国立環境研究所は、2009年より富士山頂にて本研究所が開発した自立電源型自動二酸化炭素濃度測定システムを用い、大気中二酸化炭素濃度の通年観測を行っています。これまで得られた濃度推移から山頂周辺の大気中二酸化炭素濃度は東アジアのバックグラウンド濃度であることが示唆されました。
2016年度は、長期的に観測を継続させることを目的に、バッテリーを新規のものと交換します。

 


R02 長距離輸送されたPM2.5の化学組成の日中韓同時観測による解明
米持真一(埼玉県環境科学国際センター)

近年の中国の経済発展は目覚ましく、しばしば高濃度の大気汚染が発生しています。本研究では、東アジア地域のPM2.5の長距離輸送現象を解明するために、PM2.5の連続自動採取装置を用い、富士山頂で、PM2.5を日単位を基本として採取し、主に金属元素成分に着目した化学組成分析を行います。試料採取は日本(埼玉県加須市、東京都新宿区)、中国(北京市、上海市ほか)、韓国(済州島)で同時に行い、最新のPM2.5組成の特徴を明らかにするとともに、長距離輸送を評価するための新たな指標成分の探索を行います。

 


R03 富士山頂における一酸化炭素、オゾン、二酸化硫黄の夏季の長期測定
加藤俊吾(首都大学東京)

富士山頂の測候所に一酸化炭素(CO)計、オゾン(O3)計、二酸化硫黄(SO2)計を設置し、これらの大気中濃度の連続測定を行います。COは汚染大気が輸送されてきているかどうかの指標となります。O3は汚染大気の光化学反応の進行度合いにつての指標となり、実際に大気環境に悪影響を与える物質です。また二酸化硫黄(SO2)は石炭燃焼以外にも火山から放出され、噴煙の影響を知ることができます。昨年までも同様な測定を行っており、年ごとの違いや経年変化についての比較検討も行います。


R05 富士山体を利用したエアロゾルの気候影響の研究
三浦和彦(東京理科大学)

生産性の高い海の表面からは生物に由来するガスが発生し、それが海洋エアロゾル粒子の重要な起源です。粒子数が増加すると、雲となり大気の放射が減ります。海面付近の大気境界層には海塩粒子が存在するので新粒子生成は起こりにくく、自由対流圏で生成されると思われます。富士山頂は年間を通して自由対流圏内に位置することが多いのですが、完全に大気境界層内の影響を無視することができません。山頂および太郎坊において同時に、エアロゾル粒子の粒径分布、雲凝結核数、小イオン濃度、ラドン濃度の測定、個々の粒子の元素分析を行い、それらの関係について調べます。


R06 富士山体を利用した自由対流圏高度におけるエアロゾル-雲-降水相互作用の観測
大河内博(早稲田大学)

大気中水溶性ガス・エアロゾル連続観測システムを開発して自由対流圏高度に位置する富士山山頂で観測を行い,日本上空のバックグランド濃度を明らかにします.また,越境汚染あるいは夏季の斜面上昇流に伴う山麓の汚染気塊(国内汚染)の流入に伴うによるバックグランド大気汚染の特徴を明らかにします.さらに,雲水の観測を行い,エアロゾルー雲ー降水相互作用をフィールド観測により解明します.


R07 富士山頂に流入する酸性ガスおよびPM2.5の分析
竹内正樹(徳島大学)

東アジア地域からの越境大気汚染が懸念されています。日本国内に輸送された酸性汚染物質は、自然環境を破壊するだけでなく、我々の健康にも悪影響を及ぼします。したがって、越境大気汚染の実態を解明することは、我々が健康に生活していく上で極めて重要です。本事業では、酸性ガス・PM2.5連続モニターを富士山頂で稼働させ、日本国内における越境酸性汚染物質の実態を解明してゆきます。


R08 富士山頂における窒素酸化物の観測
和田龍一(帝京科学大学)

富士山頂旧測候所に窒素酸化物分析装置(化学発光法)を設置し、富士山頂大気中の窒素酸化物濃度の連続観測を行います。窒素酸化物は、光化学スモッグの主要成分であるオゾンの濃度に影響を及ぼし、また酸性雨の原因となる硝酸の前駆体物質であることから大気環境問題における重要な化学種となります。本計画では、富士山頂にて観測した窒素酸化物濃度から東アジアからの越境汚染に関する知見を得るものです。


R09 富士山頂におけるエアロゾル化学成分の粒径別測定
畠山史郎(東京農工大学)

富士山測候所と台湾のLulin山で越境大気汚染物質を同時観測することで、東アジアにおける越境大気汚染の輸送メカニズム及びそのエアロゾルの変質過程を解明します。本研究は2015年の継続研究であり、フィルターで粒径別に捕集されたエアロゾル中の化学成分をエアロゾル質量分析計で分析することで、エアロゾルの変質過程を解明します。


R10 富士山山頂における雷研究
鴨川 仁(東京学芸大学)

富士山山頂という高所を活用し雷に関連する諸現象の研究を行います。本申請では次の3テーマ、1)雷活動において発生する高エネルギー放射線、2)スプライトをはじめとする高高度大気中における放電現象、3)落雷対策と雷対策具体化のために接地系と部材間の接続状況の調査を行います。 


R11 発達した積乱雲による成層圏への物質輸送の研究
岩崎杉紀(防衛大学校)

本研究の目的は、成層圏に達するまで発達した積乱雲が対流圏から成層圏にどれほど多くの物質(水蒸気)を輸送するか見積もることです。このため、気象衛星ひまわり8号、富士山測候所の屋外に設置したカメラ、地上レーダによって、成層圏に達するほど発達した積乱雲の同時観測を行います。カメラは複数台用意し、それぞれが同期したインターバル撮影により積乱雲の雲頂の発達過程を撮影します。

 


R12 富士山の永久凍土研究:経過観察 
池田 敦(筑波大学)

富士山山頂の永久凍土の現状を解明し,その地温変化をモニタリングすることで,将来,気候変化と火山活動の評価につなげることを目的とした研究の一環として,2010年に永久凍土をモニタリングしうる深さ約10 ㍍の観測孔を設置しました.2016年度も引き続きその観測データや山頂一帯の浅層地温観測データを回収・分析します。 


活用プロジェクト


U02 富士山旧測候所を利用した通信の可能性について
佐藤達生(KDDI㈱)

富士山旧測候所内にau携帯電話用通信設備を設置し、富士山頂付近をau携帯電話エリア化することで、au携帯電話のトラフィック状況等を分析・研究を行います。


U03 富士山頂における環境センサー実装複合型中継局動作検証と次世代型キャリアアグリゲーション高速通信の実証
波多野幸泰(㈱ドコモCS東海)

昨年度、富士山測候所内に設置したマイクロ伝送装置を屋外設置し、山頂山小屋間とも結び、ネットワーク構築と通信品質検証を実施します。また、これによる山頂全体での携帯電話の高速通信検証を実施します。環境センサーによる気象データ取得精度向上と気象による通信への影響確認を実施します。


U04 「理科準備室へようこそ」〜 富士山頂での教材開発 Ⅴ 〜
古田 豊(立教新座中学高校)

富士山頂に滞在し、生起する自然現象を観察し、あるがままの自然の振る舞いを学ぶ理科実験を工夫し、教材づくりを行います。学校教育の場面で理科の授業、部活動、有志活動等に実装可能な事例を増やします。また様々な学びの機会で教材を活用する事例を増やします。 


トライアルプロジェクト


T01 3千㍍を超える高所での噴火監視及び防災放送システムの構築

後藤善男(日本放送協会静岡放送局)

  富士山測候所に web カメラを設置し、富士山が万一、噴火した場合に備えて、噴火の瞬間を 撮影できるカメラの設置や、その一報映像を生かした、防災・減災報道をどのように行うか について検討します。 また、今回の知見を生かし、次年度以降どういったシステムを構築するか検討します。


T02 「手に取る宇宙」プロジェクト

松井紫朗(京都市立芸術大学)

 「手に取る宇宙」は、人文分野と宇宙に関するJAXAとの協働研究から始まり、未来の地球人類を育てることを目的としたプロジェクト。宇宙飛行士(星出宇宙飛行士)が国際宇宙ステーションの周回軌道に於いてガラスのボトルに宇宙空間を取り込み、地球へと持ち帰った(宇宙でのミッション)。持ち帰ったガラスのボトルを用いて地上で実施するのが「手に取る宇宙」の地上ミッションです。地上では、申請者がガラスのボトルを通じて宇宙と地上についてのレクチャーを行ったあと、参加者は実際にボトルに触れる(宇宙を持つ)体験をします。また、体験を通して感じたこと、思ったことをメッセージとして書きとめ、参加者同士で共有する時間を設けます。宇宙を手に取る、という経験によって、参加者は自身の記憶や感情を形に残したり、日常ではなかなか考えることのない宇宙や環境について考えるきっかけを得たりすることができます。


T03 高所登山活動のヘルスプロモーションへの効果を検証する実践的研究

林 綾子(びわこ成蹊スポーツ大学)

 これまでは主に国内3000m前後の山にて調査を実施してきましたが、より高度が高く、また安定した環境で調査を進めることが可能だと思われる測候所にて調査を実施します。具体的には山頂までの登山の過程・滞在中・下山過程・その後の回復過程における生理学的データ収集を行い、その後分析し、登山活動の健康への貢献を明らかにするのが目的です。


T04 昼間流星の赤外線観測、および流星のVLF電波観測

藤井大地(平塚市博物館)

流星の輝線成分の一つである原子状酸素の輝線(777.4nm)近傍のみを透過するフィルターを取り付けた高感度ビデオカメラで、昼間流星を動体検知するための調査を行います。夜間には長時間蓄積し、背景の恒星を使って視野を確認します。また、富士および平塚でも同視野を観測し、複数地点の流星位置、角速度から軌道決定を行います。さらに、流星エコー、流星のVLF電波についても同時に観測し、富士山頂における流星の電波観測環境についても合わせて調査します。


T05 位置情報パケット通信システムを利用した山地行動者の行動把握

近藤英一(山梨大学)

 山岳地域の行動者の位置情報をリアルタイム受信し、インターネット回線で回収・集約します。位置情報は、移動するアマチュア無線家が公開を目的として自発的に電波で発信しているものを利用するため、富士山域はもちろん携帯電話網が整備されていない山間地の情報も受信できます。受信限界距離や高さ、地形との関係について検討します。送信は行いません。


学生公募プロジェクト


S01 Fuji-sat3―雷雲と放射線との関係を探るための簡易測定器開発及び実証―
新田英智(東京学芸大学)

富士山測候所に人工衛星と同様の機能を持つ実験装置、模擬衛星Fuji-Satを設置し、運用・観測実験を行います。Fuji-Satの開発、運用、実験は、人工衛星の開発を志す学生・高専生を対象に参加者を募り、審査で合格したグループで行います。応募者、共同研究者は参加者の募集と参加グループの模擬衛星の開発・運用環境を支援します。さらに、Fuji-Sat Challengeを通して、人工衛星開発に求められる技術の訓練および人材育成を短期間かつ効果的にできるようにします。

 


助成による自主事業プロジェクト


J01 富士山測候所の被雷対策による温室効果ガス常時監視の実現
佐々木一哉(富士山測候所を活用する会)

トヨタ環境活動助成プログラム2015年度助成

2009年より、富士山測候所で温室効果ガスの通年測定を大量のバッテリーを用いて開始させたが、2012年冬に被雷により観測が停止し長期的に結束を生じさせた。ハワイのデータにつづく常時監視の世界的な基幹データとなりつつあった矢先に、この長期欠測は温暖化対策にも大きな損失を与えたといえる。本事業では、温室効果ガスの常時監視を確実に実現させるため、富士山測候所内の落雷サージ電圧の侵入を防ぐ技術を開発し適応させる。


J02 地球大気環境保全に向けた富士山測候所の戦略的活用計画(2)

世界に開かれた日本一ハイレベルな研究・教育拠点としての富士山測候所の再生

土器屋由紀子(富士山測候所を活用する会)

2013年度三井物産環境基金助成

高所科学研究および教育の拠点として富士山測候所の管理運営を継続し、特に①代替電源としての太陽光発電の利用など、環境に負荷をかけない自律的運用の追及②若い研究者育成と研究成果の還元のため、教育活動の支援に力を入れる。すなわち、世界文化遺産となった富士山を次世代を担う子どもたちの科学する心の芽生えを促す場としても活用する。


J03 富士山頂から地球環境問題を学んでもらうプロジェクト

畠山史郎(富士山測候所を活用する会)

2015年度ドコモ市民活動団体への助成

ドコモ社のLTE高速データ通信を活用し、研究者の取得する環境データのリアルタイム配信し、多くの市民に大気汚染状況を知ってもらい地球環境問題への関心を促す。さらに、山頂にある富士山測候所から大気科学の専門家のレクチャーをインターネット配信し、環境問題の基礎知識のみならず、データの開設、環境科学研究現場の最前線についても一般市民に啓蒙し、レクチャー中はチャット機能で質疑を可能とすることでインタラクティブ(双方向)コミュニケーションを実現する。


J04 地球環境観測拠点としての富士山測候所 労力提供型整備事業

兼保直樹(富士山測候所を活用する会)

2016年度年賀寄附金配分事業

NPOにより10年間維持されてきた富士山測候所は経年劣化により建造物の損傷が進行し、CO2などの地球環境観測拠点としての機能に支障が生じつつある。そこで、ユーザーによるボランティア的な修理作業により機能維持を図る一方で、自然エネルギーを利用することにより、地球環境保全に資する新たな機能を創出する事業を行う。

実施計画内容:①自主的補修作業として外壁、雨漏り箇所のほか、室内高温化対策のためのダクトやエア・インレットの整備②通年観測のための屋内太陽光パネル、測定器の設置③通年観測データ取得状況の監視とクオリティ・チェックを行い、次年度への改善点を探る。