地球環境観測拠点としての富士山測候所の労力提供型整備事業

 

氏名 兼保直樹 Naoki Kaneyasu
所属 産業技術総合研究所 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology

 

研究結果の概要

NPOにより10年間維持されてきた富士山測候所は経年劣化により損傷が進行し、CO2などの地球環境観測拠点としての機能に支障が生じつつある。そこで、ユーザーによるボランティア的な修理作業を行い、また自然エネルギーを利用することにより、地球環境保全に資する新たな機能を創出する事業を行った。

修理に関しては、山頂班の多大な協力のもと、1号庁舎外壁鉄板継ぎ目の劣化コーキング(目地)の除去と再充填を一部区間において実施した。

自然エネルギーによる観測機能維持の試験については、冬季にはほとんど使えなくなってしまう測候所の弱点を補うために、3号庁舎2階の西側窓2箇所に、窓とほぼ同サイズ太陽光発電パネル(公称出力50W×2)を室内側に設置して、容量46Ahrの耐低温バッテリー6個の充電を行い、これにテスト的な負荷を繋いで年間を通しての環境測定データ取得の可能性を探った。テスト的な負荷としては、産総研で開発中の超低消費電力水銀センサーを2系統繋ぎ、1チャンネルでは一日一回3時間の吸引、2チャンネルでは一日二回の3時間吸引を行っている。2系統を稼働させたのは、どちらかのチャンネルが冬季の低温等の原因で動作しなくなった場合の予備としての意味と、金蒸着した水晶振動子への水銀の収着の破過容量に対するテストの意味によるものである。予算および準備時間の関係で、長距離無線LAN等によるデータ転送の機能はまだ実装されていないため、実際に越冬で稼働し続けるか、またデータは収録されているかは来年の夏に回収するまではわからない。来年度に予算が取得できれば、改善すべき点である。

 

研究成果の公表予定
 現時点では学会発表の予定はない。