富士山頂における大気粒子および雲水に含まれるカルボニル化合物

戸田 敬
熊本大学大学院先端科学研究部
Department of Chemistry, Kumamoto University


共同研究者氏名・所属
大河内博(早稲田大学),竹内政樹(徳島大学)


研究テーマ
富士山頂における大気粒子および雲水に含まれるカルボニル化合物
Carbonyls compounds in aerosol and cloud water at the summit of Mt. Fuji

 

研究結果の概要
粒子内におけるカルボニル化合物および雲水の同化合物の濃度を測定した。測定結果はまだまとめられていないが,4日間における粒子内濃度を計測することができた。また,7月後半から8月の撤収時までに採取された雲水についてもまだ測定を終了した段階で結果は確認できていない。

ただ,2017年の試料については解析を行い,粒子の各イオン成分濃度より,粒子を形成している水の量を見積もり,その値より吸湿性粒子内のカルボニル類の濃度を見積もった。その結果,粒子には雲水に比べ105~106程度高濃度に濃縮されていることが判明した。気相のカルボニル類濃度も測定しているが,その濃度から気液平衡の値と比べると,雲水は飽和状態になっておらず,また粒子は数桁過飽和になっていた。

雲水は気液平衡に到達していないのに対し,粒子内は逆にオリゴマー化,ポリマー化が進んでいることが示唆された。ホルムアルデヒドやグリオキザールなどの主な前駆物質と考えられるイソプレンについても10分毎の測定を行った。本結果より,特に午後遅くや夕方にイソプレンの濃度が高くなることが判明した。また,かなりの濃度で存在することも確認され,その原因などについて考察している。

 

Carbonyl compounds were analyzed from aerosol and cloud water samples. The data analysis is in progress but results for 2017 were considered. The compounds in cloud water were not saturated with gaseous compounds, while concentrations in aerosol water were much higher than those of saturated concentrations. This was because oligomerization and polymerization proceeded in the fine particles. Isoprene, which is main precursor of HCHO, glyoxal and methyl glyoxal, was monitored in 10 min interval and it was found that isoprene concentration became higher in the late afternoon and early evening.

 

研究成果の公表予定 
気相と粒子のカルボニルついては,グリオキザールとメチルグリオキザールに絞った内容で,かつ熊本のデータに付加した形で論文を発表した。現段階では印刷中である。
K. Mitsuishi, M. Iwasaki, M. Takeuchi, H. Okochi, S. Kato, S. Ohira, K. Toda
Diurnal Variations in Partitioning of Atmospheric Glyoxal and Methylglyoxal between Gas and Particles at the Ground Level and in the Free Troposphere
ACS Earth and Space Chemistry, 2, xxx-xxx (2018).

また,粒子と雲水のカルボニルについては2019年内に投稿を予定している。
2019年9月の日本分析化学会年会などでの発表を検討している。